新田さん(仮)

 

雨が降るくらい暖かくなったと思ったら、朝方ちょっとだけ豪雪。春の訪れも待ち遠しいけど、冬大好き人間としては雪有難し…
春はまだしばらく先!看護婦さん達は家と職場の雪かきを思ってか、苦ーい顔をしてたけど。

今平は入院中にも新しいおばあちゃんが出来てホクホクしてたんだけど、病棟が移ってからは会えておらず、少し寂しいなあって思っての更新。
すごくすごくかわいい人。

 

 

 


今いる病棟に移る前の病棟は、病状がまだ落ち着いてなかったり、他の人に迷惑をかける可能性のある人達が入る病棟だったんだけど、そこで知り合った新田さん(仮)は自分と同時期に入ってきた人だった。

飼っていた犬を元旦に亡くし、そのショックで認知症を発症して旦那さんに連れてきてもらったらしい。
80歳と話す口調はとても若々しくて、60、50代でも通じるくらいに表情も姿勢も凛としてた。

「もう歳だから、新しい子も飼えないし…すごく寂しくてね、頭がおかしくなっちゃったのよ。」
「趣味は社交ダンスとスキーで、もうずっとやってきたんだけど、痴呆には敵わなかったみたいね。」
そう言って朗らかに笑う顔に、自分の方が寂しくなっちゃったりして。

 

 


可哀想。
って、誰かがそう思った瞬間にその人は"可哀想な人"になっちゃうんだよね。きっかけは忘れたけど、その頃よく考えてた。
今平はなるべく、誰かに対して可哀想と思うことはしたくなくて、自分が見たその人を囲む環境と、その人から見た周りの景色はきっと違うし、
逆もまた然りで、自分の環境に悩んでる人には、また別の角度から見たときにはまだまだたくさんの発見がきっとあるよってことを伝えていきたい。


頑張ってても、ひたむきでも、可哀想の一言でなんだか寂しくなってしまう。
その人の輝きが褪せてしまう気がする。
些細なことでも、言葉が与える影響は時に大きく、人の在り方を左右するんだってことを、新田さん(仮)を見て改めて思えた気がした。

 

 

懐かしそうに、楽しそうに話す姿には、可哀想の文字は到底結び付きそうにない。
「飼ってた犬の名前は、むかーし付き合ってた彼氏の名前なの。ケンタって言うから、ケンちゃんケンちゃんって呼んでてね。」

次に聞いたときは「マネージャーの名前でね…」って言ってたりして、マネージャー兼彼氏だったのか…?なんの仕事してたんだ…?って謎が謎を呼んだりもしたけれど。

 


「おばあちゃんと孫ってことで、頑張っていきましょう。」

「私は新田(仮)っていうの、あなたは?」


毎日の自己紹介が本当に楽しかった。
この先少しでもあたたかい環境にいられることを、心から願う。